30代初の旅行は、12月5、6日の週末。クリスマスマーケットを求めて、フランスのストラスブール(Strasbourg)、ドイツのオッフェンブルク(Offenburg)、バーデン・バーデン(Baden Baden)の3都市を訪ねました。クリスマスマーケットの本場といえばドイツです。昨年は北ドイツハンブルク、リューベック、ブレーメンに飛びましたが、7日に丁度パリ出張が入っていたので、今年はその前にパリからアクセス可能な都市を選択。TGVで2時間20分にあり、フランス随一のクリスマスマーケットと評判のストラスブールを訪ねることにしました。
ストラスブールはドイツ国境に近いアルザス地方の中心都市。アルザス地方は戦争の度にフランス領、ドイツ領とその所属が二転三転することで世界史の教科書にも登場します。有名なドーデの「最後の授業」はアルザス地方の学校が舞台。普仏戦争の結果この地方がドイツに割譲され、翌日から授業で用いられる言語はドイツ語でなくてはならないとされた中、先生がフランス語での最後の授業を涙を堪えながら行う場面が描かれました。そういった歴史的背景からいわゆる「ドイツ色」が色濃く残る地方であり、幸か不幸かフランス国内では最も大きく華やかなクリスマスマーケットが開かれるに至ったのでした。何とこのマーケットを目当てに、アルザス地方にはクリスマスの時期だけで150万人以上の観光客が押し掛けるそうです。
そんなストラスブールのクリスマスマーケット、町の中心の広場には大きなクリスマスツリーが聳え立ちます。冬の寒空の下、木組みの家をバックに電飾で金色に煌くツリーが浮かび上がる様は、まさに感動的な美しさでした。
このツリーの足元には木で造られた小さな家々の模型が並べられ、内部から灯りで照らし出されていました。ストラスブールの町を模したものでしょうか。
ストラスブールのシンボル、ノートルダム大聖堂。1176年から250年もの歳月を掛けて建てられたという大聖堂の前も華やかにライトアップされていました。光のアーチの向こう側に見える塔の高さは、142mにもなります。
さて、クリスマスマーケットの定番といえばホットワイン、フランス語ではVin Chaud。クリスマスマーケットを見て回って冷え切った体を温める、ハーブを加えて温めたワインです。昨年訪れたドイツ、2002年に訪ねたチェコ、ベルギーのクリスマスマーケット、どこでも定番でしたが、フランスでもその事実には変わりありませんでした。アルコール分はほとんど飛んでしまっているのかもしれませんが、これがなかなか美味しいのです。
一方、ドイツのクリスマスマーケットでは定番のソーセージの屋台を目にすることはありませんでした。クリスマスマーケットで食べるソーセージは格別に美味しいと盲信している僕にとっては、非常に残念でした。代わって多くあったのが、クレープ屋やゴーフル屋。このあたりまさにフランス的なのですが、甘いものが苦手な僕としては正直全然嬉しくありません。甘くない食べ物として唯一見つけられたのがピザでしたが、作り置き、その場でレンジでチンして出されるようだったで、せっかくクリスマスマーケットに来たのにと思い手が出ませんでした。
その他、クリスマスマーケットでは定番の可愛いクリスマス小物もたくさん売られていました。左が木工のオーナメント、右は陶器で作られた家の形をした置物。昨年に引き続き思わず衝動買いしてしまいそうでしたが、日本に帰国後これらを飾って似合うような家に住むとは到底考えづらく、ぐっと堪えました。
ところで、クリスマスマーケットの屋台の店先で黒トリュフが売られているのを発見して驚きました。1kg550ユーロだそうですが、わざわざこんな場所でこんな高級食材を買う人がいるのでしょうか。そもそもクリスマスと黒トリュフって何か関連性あったでしょうか。七面鳥と黒トリュフ?チキンと黒トリュフ??クリスマスプディングと黒トリュフ???
実はストラスブールを訪れることに決めたのは出発のほんの数日前。その結果、観光客が殺到しているためかストラスブール市内でホテルを手配することができませんでした。何十軒もホテルがあるはずなのに、凄まじい人気です。従ってやむを得ず、国境を流れるライン川の向こう側、鉄道で東に30分にあるドイツの町オッフェンブルクに適当な宿を見つけ、そちらに宿泊することにしました。国境越えというのに線路は単線、2両連結の簡素な列車に揺られていきます。当然(?)ながら、国境でのパスポートのチェックはありませんでした。
オッフェンブルクはとても小さな町。でもこんな町にもこじんまりとした可愛らしいクリスマスマーケットが立っています。大きなクリスマスツリーもきちんとありました。
小さいクリスマスマーケットの中で印象的だったのが、スケートリンクがあったこと。小規模ながらも、子供たちが嬉々として滑っていて、立派にエンタテインメントを提供していました。日本では見たことがない、補助滑走器(?)のようなペンギングッズもあり、大活躍。一生懸命滑っている子供たちが可愛らしく微笑ましかったです。結婚もしていないくせに、真剣に子供が欲しくなりました。
さて、ストラスブールでは全く見掛けなかったソーセージの屋台ですが、川を渡ってドイツに来るとちゃんとありました。早速、ソーセージをぶつ切りにしたものにケチャップとカレーパウダーをかけたカレーヴルスト(Currywurst)をいただきます。旨い!やっぱりクリスマスマーケットはこうでなくてはなりません。
続いて、いかにもドイツ的な一品、ザワークラウト(キャベツの漬物)、ベーコン、マカロニを炒めた料理もいただきました。名前は不明。ソーセージもこの料理も、ビールとの相性抜群です。ドイツ万歳と思わず心の中で叫んでしまったのでした。ただ、ここもドイツとはいってもフランス直近、その影響が若干あるのでしょうか。ソーセージ屋台は1軒のみ、他方クレープの屋台は3軒もありました。ここでも僕はクレープには頑なに手を出しませんでしたが・・・。
夜は賑やかだったクリスマスマーケットも、朝にはこのように人影もなく、静寂に包まれています。大体11時頃から店は開き始めるようです。日本の初詣やお祭りの屋台も似たようなイメージでしょうか。閑散とした時間帯は本当にがらんとしています。
そして、次に目指した町はバーデン・バーデン。オッフェンブルクから鉄道で北に30分にあります。バーデンとはドイツ語で「入浴」という意味で、その名の示すとおり温泉で名高い町。かつて有名なローマ帝国のカラカラ帝も入りに来たとのことなのですが、今回は温泉は完全にスルーし、目指すはクリスマスマーケットです。
オッフェンブルクのものよりも規模が大きい、なかなか盛大なクリスマスマーケットでした。写真を撮ったのはまだ午前中だったというのに、人影もそれなりに見られます。
フランスからさすがに1時間も離れると、その影響力は低下するようです。バーデンバーデンのクリスマスマーケットはソーセージ屋だらけでした。この回転する鉄網の上で炭火を使って焼き上げるソーセージの美味しいこと。噛むとパリッという音ともに肉汁が溢れ出し、至福を感じるのでした。しつこいようですが、やっぱりクリスマスマーケットはこうでなくてはなりません。一方、この町ではクレープ屋を見掛けることは全くありませんでした。物凄いギャップです。
変り種として気に入ったのがこのピザ。屋台その場で生地を作り、具を乗せ、石釜の中炭火で焼き上げていました。生地にニンジンとブロッコリー、たっぷりのチーズとマヨネーズのトッピングが実に美味しかったです。小麦が良かったのか炭火が良かったのか、特にもちもちっとした生地が高ポイント。素朴な味付けもドイツ田舎町のクリスマスマーケットに相応しく思われました。
ということで今回3ヶ所のクリスマスマーケットを訪ねましたが、三者三様でなかなか興味深かったです。特にドイツではソーセージ屋台が多くクレープ屋台がなく、フランスではその逆、中間地点においては並存していたことがある意味衝撃的でした。こんなところにも文化が表れるなんて、異文化理解とは実に奥深いものです。
何はさておき、それにしてもクリスマスマーケットは楽しい。雰囲気が大好きです。今年もう1ヶ所行きたいけれど・・・、難しいかなあ。
雰囲気にすっごく酔える。それでなくてもうちは酔えるけど。
もう一カ所行きたいの??どこかな〜?
投稿情報: あきこ | 2009-12-08 10:53
NeCoさんのmixiからきました♪
写真上手ですね!
クリスマスマーケット、いいなー
とってもロマンチック★
投稿情報: YAJICOCCO | 2009-12-08 14:19
Mariaに会えましたか?
ストラスブールってこんなにきれいなんだね。
ちなみにフランスのクレープってGaletですよね?
そば粉を使った。
おいしいですよ。私は神楽坂にあるお店で食べたことがあります。
でも、ドイツのザワークラウトとソーセージが食べたい!
投稿情報: erica | 2009-12-08 18:27
わぁ~おとぎの国だぁ
ショーケースを見ている子もスケートしている子達もかわいい♪
いい表情してるね
そして、ハーブ入り?炭火焼きソーセージ!!
パリッ!ジュワッ!食べたい・・・
投稿情報: JUN | 2009-12-08 23:51
長文お疲れさまです!興味深く読ませていただきました。
フランスのクレープも食べてみたいけど
ドイツの音付きソーセージやっぱり美味しそうだ!
食文化とフィジカルな距離。
人間は本来さほど移動に長けていないのかもね。
クリスマスマーケットかわいらしくてきれいで、
おとぎの国みたいです。
そこにいる子供達はまるで妖精だね。
投稿情報: hitsuji | 2009-12-09 00:30
ストラスブールのクリスマスマーケットのツリー
素敵ですね~。やはり、クリスマスと言えば本場はヨーロッパですよね。比べてしまうと、日本は、負けちゃいますね。
見ているだけで、楽しい気分になります。
今年、もう一カ所行きたいとは、
どちらに行きたいのですか?
日本も、関東は、今週、雪が降るかと言われていますが
ロンドンも、きっとかなり寒いんでしょうね~。
風邪など、ひかれませんように。
投稿情報: japako | 2009-12-16 22:51
>皆様
コメントお返しするのが1ヶ月以上後になってしまい、ごめんなさい。
年末年始、日本帰国もあってPCとほとんど向き合わずにいました・・・。
投稿情報: Shibuya | 2010-01-18 13:56
>あきこ
酔ってばかりじゃ駄目だよ、苦笑。
結局どこにも行けませんでした。
残念!
投稿情報: Shibuya | 2010-01-18 13:58
>YAJICOCCOさん
初めまして、僕はNeCoさんの学生時代のサークルの先輩でした。
ありがとうございます。
ヨーロッパのクリスマーケット、寒いけれど、雰囲気は最高です!
心がほっと温まり癒されます。
是非一度お訪ねあれー。
投稿情報: Shibuya | 2010-01-18 14:00
>erica
ちゃんとMariaに会ったよ。
彼女の引越しとぶつかって、本当に一瞬しか会えなかったけれど。
いつになってもどこに行っても旧友との再会は良いものです。
クレープ美味しいのか!?
甘いと思って手を出さなかったけれど、食べてみれば良かった。
投稿情報: Shibuya | 2010-01-18 14:02
>JUNちゃん
白人の子供って本当に可愛いよね。
お人形さんみたい。
ソーセージ、ドイツのものはやっぱり美味しい。
イギリスも名物のはずなのに・・・、かなり味のレベルに差があるんだよなあ。
投稿情報: Shibuya | 2010-01-18 14:03
>hitsujiさん
そうそう、こんなに近いのに、がらっとマーケットで売っている食べ物が変わったのには軽い衝撃を受けました。
子供たちは妖精って表現がぴったり!
投稿情報: Shibuya | 2010-01-18 14:05
>japakoさん
ヨーロッパと日本のクリスマスは、位置付けが違うので、やはり雰囲気もかなり異なっています。
日本のクリスマスもイルミネーションが滅茶苦茶綺麗だとは思いますが、やっぱりどこか商業的で、興醒めしてしまうのは僕だけでしょうか・・・。
投稿情報: Shibuya | 2010-01-18 14:07